2017年の年末に220万円を超えてから、2018年2月には70万円と3分の1以下まで値を崩したビットコイン。その後の反転上昇で120万円(原稿執筆時)まで戻し、値動きの大きさを鮮やかに印象づけた感があります。では、なぜ急速に値を回復させているのでしょう? 当記事では、この値動きに多大な影響を与えた米商品先物取引委員会(CFTC)に焦点を当ててみます。
※この記事は、FX攻略.com2018年5月号の記事を転載・再編集したものです
【【Bitcoin Geek】オタク視点でビットコイン考察[佐々木徹]】
・第1回 ビットコインの上昇圧力を無料で計測する方法
・第2回 ビットコインの価値
・第3回 仮想通貨売買で大金を失わない方法
・第4回 チャート分析は暗号通貨に通じるか
前のめりなほどビットコインに好意的なCFTC
新聞やニュースで、よく「投機筋が円を大幅に売り越し」などの記事を見ることがあります。これらはCFTCが集計し発表をしているデータを基に記事が書かれています。普通に考えれば、自分が保有しているポジション情報を人に明かすなど誰もしたくないはずです。ところが、CFTCは業界の不正を防ぎ透明性を確保するためにも、米国内でコモディティの売買を行う法人にポジション動向のレポートを義務付けています。先物の市場に資金が滞りなく入り続けるための環境を監視する、いわば「蛇口の番人」のような立場ですね。
なお、先物と聞くと日本ではアレルギー反応が先に来る感があります。某金融系の漫画でも、悪徳業者に搾り取られる先生などが克明に描写されていましたしね。ただ、いわゆる「FX取引」もトレード実行日と現金決済日が同一でない限りは、広い意味で「先物」に分類されます。このあたりは、誰がどういう解釈をするかで変わってきますね。
さておき、そんな強い権力と権威を持つCFTCと、米証券取引委員会(SEC)の議長が米国の議会に呼ばれ、公聴会が開かれました。前評判としては、詐欺まがいの資金調達が糾弾され、ドルにペグした暗号資産を発行するTether社が徹底追求されるのではないか? さらに流れ弾で業界に強い規制が入り、資金流入が途絶え価格も下落するのではないか? というものが多勢を占めていました。
年末の狂ったような高値から下落のモメンタムに乗るビットコイン。さらにコインチェックのNEM流出事件を受け、転がり落ちる速度は止まりません。このまま底なし沼で価格はゼロまで突っ込むのではないか? そんなセンチメントさえ市場に蔓延。チャートからも悲観の感情がビリビリ伝わってくるタイミングで開催された公聴会でした。おそらく暗号通貨の業界人は、公聴会ライブ放映をひたすら視聴し続けていたのではないでしょうか?
そして誰もが予想しなかった展開が起こります。CFTC議長のクリストファー氏が冒頭のスピーチで開口。「公聴会に先立ち、父親としての視点から考えを述べてみたいと思います」。そう、父親です。議長としてでもなく、先物委員会としてでもありません。1人の人間として考え方を述べるというのです。もう視聴者は釘付けだったでしょう。そして以下に続きます。
「自分はカレッジに行く3人の子どもを持つ父親です。彼らが高校時代、金融市場に興味を持たせるために、数百ドルの株式取引口座を開設して取引をさせてみました。ところがゲーム会社の株式を買った一番若い息子以外に、株式の市場に興味を持たせることはできませんでした。同年代の子どもは似たようなものだと思います。ところが昨年、何かが変わりました。3人が3人とも、突然ビットコインについて話し始めたのです。私にビットコインはどう思う? 買うべきか? と聞くのです。既にビットコインを保有していた従兄弟の1人がビットコインについて話をすると、3人とも大喜び。この委員会に参加されている方も、似た経験をされているのではないでしょうか? これを見て、若い世代が仮想通貨に持つ熱意を、決して否定的ではなく、バランスが取れた、そして思慮のある方法で尊重し応えていく必要があると突如理解をしました」
スピーチが始まった時間は2月6日、NY時間の午前10時。チャート①は、その前後のBTCUSDの1時間足です。確実に公聴会のスピーチ時間で空気が変わっていることが伝わってきます。では、なぜここまで大きなインパクトを与えたのでしょうか? 筆者なりの考えを書いてみたいと思います。
利害の一致
金融業界にとって最大の課題は、「人々が取引したい対象を見つけ育てること」にあります。取引の量さえ十分にあれば、そこにはさまざまな収益機会が生まれます。取引手数料だけでなく、マーケットメーカー、格付け会社、HFTファーム、回線事業者なども潤います。結果的に税収・雇用も増え、誰もがハッピーになれる未来像が描けるわけです。
ところが、立ちはだかる壁「10代20代は株式に興味がない」が大きな問題点としてありました。確かにインデックスにヘッジファンドは勝てず、市場は中銀の買い支えをアテにするという現状は、若い世代を引きつける材料には少し乏しいのかもしれません。こうした中で降って湧いたビットコインと暗号通貨市場。年代別で見れば、圧倒的に20~30代のシェアが高いわけです。
ではなぜ若い世代の人々は、ビットコインに熱中するのでしょう? 正直なところ理由は「何だって良い」のです。100人いれば理由は100通りあるわけですから。それより、取引量が圧倒的に増えているという現実は否定しようがないのです。ならば事実を尊重して、持続可能な成長につなげるにはどうすれば良いか。そんな前向きな考えを、蛇口の番人であるCFTC議長が公式な場で述べたわけです。
世界中のマネーは、現金・預金・株式・デリバティブまで含めると700Trillion(1Trillion=約107兆円)以上あります。今の暗号通貨は急成長といっても、たかだか0.4Trillionの時価総額。デリバティブが取引される最大の場所は米国です。その国の規制団体トップが好意的であるということは、700Trillionの資金が0.4Trillionの市場に向け、蛇口を開ける可能性が現実として見えたわけです。そう、暗号通貨市場の伸び=金融業界の利益、という利害の一致が確認できた瞬間でした。
自分は、この公聴会を聞いて嬉しすぎて画像①のツイートを2月8日に流しました。ビットコインが年末に500万円に到達しているかは分かりませんし、保証の限りではありません。ただ、底が見えないほど泥沼のような状況であった暗号通貨のセンチメントを一撃で変え、まるで違う空気がマーケットに流れ込んできたことを感じた人間が、最低でも1人はいたことに間違いはありません。
今後も暗号通貨の市場は激しい上下動を繰り返し、ビットコインは単なる投機対象で価値の裏付けなど何もないという記事・コメントも増えていくでしょう。それと歩調を合わせるように、暗号通貨に興味を持ち始める若い世代は増えていくのかもしれません。荒いライドに飲まれないよう、余裕を持った付き合いを続けたいものですね。ハッピー・トレーディング!
もっと知りたい方へ
今回の記事で書いたCFTCの影響・前後の値動きなどはココスタのブログで動画を交え無料公開しています。リンク先からすぐに視聴を開始できますので、気軽にチェックしてみてくださいね。
・ビットコインは$6,105で底打ちか?SEC公聴会サプライズ
※この記事は、FX攻略.com2018年5月号の記事を転載・再編集したものです
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