FXトレーダーの皆さんも、仮想通貨のニュースを最近よく耳にしているはず。この企画では、「興味はある、でもはじめかたが分からない」という方のために、専業トレーダーのボリ平さんに、仮想通貨の基本中の基本から解説していただきます。今月は、仮想通貨の成り立ちと特徴の授業です。ゆっくり学んでいきましょう。
※この記事は、FX攻略.com2018年5月号の記事を転載・再編集したものです
謎の人物が発案し有志の手により発展
小曽川 まず、仮想通貨って何ですか?
ボリ平 簡単にいうと、国などの管理を受けないデジタルな資産なんだけど、それに価値がついているのが現状です。
もともとは、サトシ・ナカモトさんという方が、インターネット上のフォーラムに概念を発表したのが始まりです。2008年のことです。
小曽川 日本人が作ったんですか?
ボリ平 それは定かじゃありません。何せ、サトシ・ナカモトという人物の情報はベールに包まれていて、日本人なのか、個人なのかチームなのかといったことも、実は分かっていません。そして2010年、彼は姿を消します。
小曽川 作った人がいなくなったら、大変なことじゃないですか。
ボリ平 ところが、ビットコインはオープソースのソフトウェアなので、プログラム内容が開示されていて、誰もが開発や運用に参加できるんですね。なので、それ以降も有志の手により開発や運営が続けられているのが現状です。
小曽川 僕でも聞いたことがある、ブロックチェーンとは何ですか?
ボリ平 ブロックのようにまとめられたデータを、どんどん数珠つなぎで追加しながら保管していく技術のことです。全ての取引が記録されており、後から内容を変更できないようになっています。
ビットコインを実現させるために、ブロックチェーンの技術が必要でした。しかし、今ではブロックチェーンの技術自体が社会を変革する大きなイノベーションだと注目されています。
お金でありながら国が管理していない
小曽川 ビットコインなどの仮想通貨は、普通のお金と何が違うんでしょうか。
ボリ平 さっきもいったように、発行主体がないことですね。これはドルや円でいうところの日銀やFRB、つまり中央銀行がないということ。
小曽川 国が管理していないってことですね。
ボリ平 そうそう。国によって、仮想通貨を規制しますが、その理由はとてもシンプル。分かりますか?
小曽川 うーん、分かりません。
ボリ平 自分のところのお金が、仮想通貨にどんどん流れちゃうから国が儲からない、また自国民が何らかの被害に遭っても保障できない。
小曽川 なるほどです。
ボリ平 あと、仮想通貨では、インフレやデフレが起きたとき、それをコントロールできない。ドルや円なら、自分の国のお金ですから、これをどんどん刷って増やすことができます。あと、金利の上げ下げですね。これも仮想通貨ではできません。
こういった、中央銀行が物価や景気をコントロールするために行う作戦を金融政策というのですが、仮想通貨ではもちろんできません。
小曽川 なすがままなわけですね。
ボリ平 ブロックチェーンのところでちょっと説明しましたが、仮想通貨は「不可逆性」が特徴です。つまり、一度記録された情報は、後から元に戻したり、情報を付け足すことはできないんですね。こういう仕組みで自動的に動いているわけですから、たとえ国であっても、勝手に増やしたり、減らしたりすることはできないわけです。
国家レベルの電気代が必要!
小曽川 マイニングという言葉を聞いたことがあるのですが。
ボリ平 はい。ビットコインの場合なら、10分に一回ずつ、ブロックが形成されていきます。このとき、一つ前のブロックと最新のブロックをつなぐためのキーを、パソコンで膨大な計算をして見つけなければいけません。この計算を最初に成功させた人に、ご褒美としてビットコインが与えられるんですね。これを狙って、パソコンで計算をしまくるのがマイニングです。
小曽川 面白そうですね! 僕も家のパソコンでやってみようかな。
ボリ平 残念ながら、ビットコインのマイニングは、一台数百万円もするような、専用のマシンを大量にそろえないと、全くお話にならない状況です。
小曽川 そんな…。
ボリ平 中国のビットメイン社みたいな、巨大企業が電気代の安い土地に大きな工場を建てて、大量の専用マシンで昼夜ずっと計算しています。
小曽川 すごいスケールですね。
ボリ平 使う電気代もすごいですよ。デンマーク一国が使う電気代に達したというニュースもありました。
小曽川 なんという恐ろしい世界。
ボリ平 ただ、ビットコインではない、他の仮想通貨でなら、普通のパソコンでマイニングできるものもありますよ。来月以降のこの授業では、そのあたりについても解説していこうと思います。最初は難しくても、慣れると楽しいですよ。一緒に勉強していきましょう。
小曽川 よろしくお願いいたします!
仮想通貨用語メモ
仮想通貨の誕生
2008年にサトシ・ナカモトが発表したビットコインに関する論文は、上記URLにて公開されています。英語ですが長文というほどでもないので、翻訳ソフトなどを使って読んでみましょう。
ブロックチェーンって?
ビットコインなど仮想通貨では、全参加者の取引の記録を一定時間ごとにブロックにまとめ、それを一つずつ先頭に追加していきます。これをブロックチェーンと呼びますが、この過程は衆人環視の状況で行われており、確定したブロックの内容を変更できないため、内容の改ざんは極めて困難です。これが仮想通貨の信用性を担保しています。
マイニングって?
ブロックチェーンをつないでいく際、新しいブロックと過去のブロックを接続するキーと呼ばれるものを、膨大な演算を駆使して見つけ出す必要があります。最初に発見した人は、その報酬として一定量の仮想通貨を得ることができます。これを得るための計算作業を、マイニングと呼びます。
今月のまとめ
● 2008年にサトシ・ナカモトがビットコインを発表したのが仮想通貨の始まり。ただし彼の素性は謎
● データを一つにまとめてどんどん継ぎ足していく技術がブロックチェーン。データの改ざんはまず不可能
● 仮想通貨は法定通貨(ドル、円など)と違い、発行主体がいない。そのため、金融政策は不可能
● 仮想通貨のブロックチェーンを構成するための計算作業に参加し、報酬を得るのがマイニング
※この記事は、FX攻略.com2018年5月号の記事を転載・再編集したものです